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対談

第11回 人形劇芸術を通した国際文化交流体験 長野県飯田市との連携プロジェクト

2018.10.30

人形劇芸術を通した国際文化交流体験
長野県飯田市との連携プロジェクト

伊藤 由希子 総合政策学部教授
大島 幸 総合政策研究所研究員
津田塾大学総合政策学部 2年 増田 珠美さん
津田塾大学総合政策学部 2年 羽田 彩乃さん

長野県飯田市と津田塾大学の取組み

津田塾大学は2018年4月、長野県飯田市と包括連携協定を結びました。同市は人形浄瑠璃の歴史が古く、毎年夏に国内外の人形劇団を招く国内最大の人形劇の祭典「いいだ人形劇フェスタ」を開催しています。今年は、その40周年を記念する「世界人形劇フェスティバル」が8月に開かれ、同時に「人形劇の友・友好都市国際協会(AVIAMA)」総会も開催されました。そこで、連携協定最初の取り組みとして、津田塾生12人が、参加者の通訳・アテンドをはじめ、参加8カ国16都市それぞれの人形劇文化を紹介する英語でのプレゼンテーションを担当しました。プロジェクトに参加した総合政策学部2年生の増田珠美さんと羽田彩乃さん、指導に当たった大島幸・総合政策研究所研究員と伊藤由希子・総合政策学部教授に、この夏の貴重な経験を振り返ってもらいました。※AVIAMA の正式名称はAssociation Internationale des Villes Amies de la Marionnetteです。

足を運んで集めた情報

大島

まずは、お二人がプロジェクトに参加した経緯を聞かせてください。

増田

私は長野県須坂市の出身で、大学在学中に何か長野県に貢献したいと願っていました。なかなかその機会がありませんでしたが、やっと行動に移せる、と参加しました。

羽田

私は話すことが苦手で、人との交流を通して話す自信をつけたいと思っていました。また、5歳からクラシックバレエを習っているので、舞台芸術に対する興味もありました。

大島

12人のメンバーが正式に決まったのは5月でした。8月のAVIAMA総会本番に向け、6月にまず3日間、飯田市にスタディ・ツアーに出かけましたよね。どのような印象でしたか。

増田

いいだ人形劇センターや川本喜八郎人形美術館、黒田人形伝承館などを回り、水引細工なども体験しました。人形劇にかける飯田市の方たちの思いに触れ、プレゼンではこれを何としても伝えたい、と強く思うようになりました。同じ長野でも、私の地元は北部で、飯田市は南部。方言も違うし、人々がみんな協力しあって暮らしている、そんな温かみを感じました。

羽田

一番驚いたことは、東京からバスで4時間もかかること(笑)。総会期間中、私は韓国・春川市からの参加者のアテンドをしたのですが、スタディ・ツアーで下見をしていたので、市内の案内や話題には困りませんでした。

大島

話すのが苦手、ということでしたが……。

羽田

アテンドの3日間で自信を持てるようになりました。

大島

ほかにも、本番までいろいろ準備しましたね。

羽田

プレゼンで、私は糸操り人形劇の伝統がある岡山県瀬戸内市の担当だったので、現地に足を運びました。インターネットでも情報は得られるのですが、実際に自分の目で見てみると、人形の顔の凹凸などがよくわかり、その迫力に驚きました。ちょうど西日本豪雨の時期と重なり、電車が止まったりして大変でしたが、行ってみて良かったです。

増田

あちこちに出かけ、情報はたくさんいただきましたが、それをまとめるプレッシャーもありました。実際、人形劇に携わっている方たちの言葉は一つひとつに重みがあって、本当は全部紹介したかったです。

チームワークが光ったプレゼンテーション

大島

英語プレゼンテーション用の原稿づくりが始まったのは7月でした。30分近いプレゼンのために、いろいろ工夫しましたよね。7月後半になって、メンバーのアクセルが一気に加速した感じが伝わってきましたが。

増田

「やるっきゃない」という思いでした。誰か一人が頑張り始めると、「じゃあ、私はここにこだわってみる」という人が現れて……。

羽田

分担を決めたわけでなく、みんな、自然と自分から動けた感じでした。

伊藤

それぞれが自分にできることを探しながら、取り組んでいましたよね。みなさんのチームワーク力を垣間見ました。今回は初めての試みとして、2年生10人と私たち教員2名、Google Driveでファイルを共有し、みんなでプレゼン用の原稿を編集していったので、誰かが何かを加えたり、直したりする履歴が全て残るんですよね。オープニングのテーマ曲をどうするかとか、1時間の人形劇のうち動画で紹介する10秒はどの場面を使うかなど、ものすごく工夫して、選んでいった。終わってみれば30分のプレゼンでしたが、その中に詰め込んだ思い、考えたことは、全部ドライブに残っていて……これは消去できないですよね(笑)。

羽田

相談しやすい環境があって、先生方との距離も縮まり、ありがたかったです。

大島

何時にドライブを開いても、必ず誰かしらオンラインで対応していて、気づくとスライドが直っている! みんな頼もしく成長してくれました。7月の終わりに当日の発表者5人を決めたのですが、増田さんが手を挙げてその一人になってくれましたよね。どのような思いでしたか。

増田

本当は立候補しないつもりでした。せっかくみんなが頑張ってつくったものだから、私よりも英語が得意な人がプレゼンしたほうが、質が高くなるのではないか、と。でも、私はこれまでいつも英語から逃げてばかりで、ここが頑張るタイミングなのかな、とも思ったのです。先生方やメンバーたちにも、応援してくれる空気があったので、思い切って立候補させてもらいました。今も英語が得意でないことに変わりはありませんが、挑戦してみたことで、以前より英語の勉強を頑張れるようになりました。

羽田

当日、発表している5人の姿を会場で見ていて、かっこいいなと思いました。観客の誉め言葉も耳に入ってきた。「あの子たち、帰国子女なの?」って(笑)。私も次にこういう機会があったら、ぜひ挑戦してみようと思いました。

本質つかむ力に感動

伊藤

連携協定を結んで最初の活動だったので、ミスがあってはいけない、と実はヒヤヒヤしていました。でも、みなさん、期待した以上の成果を出してくれました。できあがったものを見ると、単にそれぞれの市の人形劇を紹介して終わり、ではなく、人形劇という古い歴史のある芸術をどのように伝え、残し、さらに発展させていくか、という難しいテーマやメッセージをきちんと取り込んでいたことに感心しました。

増田

プロジェクトのおかげで、人形劇にはとても詳しくなりました。これまでは「見せてもらう」立場でしたが、裏で支える人たちや技術を知ることができ、多くの視点から楽しめる力を得ました。

羽田

「人形劇は子どもが見るもの」と思っていましたが、今の私でも、これからもっと年をとっても、楽しめるものだと知ることができました。

伊藤

人形劇というのは間接的なメディアで、人間が直接的に言うときつくなることでも、人形ならおもしろおかしく言えたり、かえってよりリアルに伝えたりできますよね。それに、命ないものに命を吹き込める。「人形を遣う」のではなく、「人形と演じる」、それが人形劇の醍醐味だ、とプレゼンでみなさんが紹介してくれました。短い間にここまで本質をとらえ、深く理解できていたことに、人形劇に携わる方たちも感動されていましたよ。みなさんの感性を信じてよいのだ、と私も思いました。

大島

改めて振り返って、どんな夏でしたか。

羽田

すごく充実した、「熱い夏」でした。

増田

関係した人たちに喜んでいただけて、頑張って良かったです。これからも、いろいろな形で飯田市と関わっていけたらと思います。

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