INTERVIEW

津田塾大学は千葉県香取市佐原の特定非営利活動法人「佐原アカデミア」と包括連携協定を結び、総合政策学部の学生たちが「佐原の大祭プロジェクト」に取り組んでいます。佐原地区で行われてきた歴史的なお祭り「佐原の大祭」を訪れる観光客を調査し、データを分析することで、地域の発展や観光政策立案に生かそうというものです。プロジェクトを指導する総合政策学科の鈴木貴久特任助教が、同プロジェクトの中心メンバーである本間花さん、二瓶真友さん、高橋花音さん(いずれも総合政策学科2年生)に話を聞きました。

INTERVIEW 14

データ分析で地域に貢献
(佐原の大祭)秋祭りにおける社会実証実験
鈴木 貴久 特任助教
津田塾大学総合政策学部 2年 本間 花 さん
津田塾大学総合政策学部 2年 二瓶 真友 さん
津田塾大学総合政策学部 2年 高橋 花音 さん

(佐原の大祭)秋祭りにおける社会実証実験
津田塾大学は千葉県香取市佐原の特定非営利活動法人「佐原アカデミア」と包括連携協定を結び、総合政策学部の学生たちが「佐原の大祭プロジェクト」に取り組んでいます。佐原地区で行われてきた歴史的なお祭り「佐原の大祭」を訪れる観光客を調査し、データを分析することで、地域の発展や観光政策立案に生かそうというものです。プロジェクトを指導する総合政策学科の鈴木貴久特任助教が、同プロジェクトの中心メンバーである本間花さん、二瓶真友さん、高橋花音さん(いずれも総合政策学科2年生)に話を聞きました。




3種類のデータを集め、分析

鈴木
まずは「佐原の大祭」とは、どういうものですか。
本間
約300年の歴史があり、秋祭りでは小江戸と呼ばれる歴史的な街並みを、13台もの山車が練り歩きます。関東三大山車祭りのひとつで、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているにも関わらず、あまり認知されていません。また、データが少なく、実際どれぐらいの人が訪れているのかさえ、はっきりしていませんでした。
鈴木
私も千葉県出身なのですが、知りませんでした。せっかく美しい景観と立派なお祭りがあるのに、あまり知られておらず、データもない。どうすれば観光客を集められるか。それは、佐原だけでなく、いろいろな地域の活性化とも関係がある課題です。対策を考えるためには、まずは現状を正しく把握しなくてはならない。それには、データが必要ということで、今回みなさんが調査したわけですね。どのようなデータを、どのような手法で集めたのですか
本間
プロジェクトに参加した学生は2年生15人。鈴木先生、曽根原(登)先生と共に、昨年10月12日から14日までの秋祭りの間、現地に泊まり込んで調査しました。集めたデータは大きく分けて3種類あります。まずは、アンケート調査。3日間、約200人に「どこから来たのか」「何をきっかけにこの祭りを知ったか」など23項目を聞き取りました。
二瓶
それから、お祭りに来た人数を計測しました。外から来る人は車か、電車か、高速バスを利用します。そこで、駅や駐車場に立って、人数をカウントしました。
高橋
3つ目は、SNSから得るデータです。インスタグラムのアカウントをつくり、お祭りの魅力を発信し続けました。当日だけでなく、18日前からカウントダウンをしていたんです。かき氷などの「食べ物」、大祭の特徴である「山車」、佐原地区の「景観」という3つのジャンルで投稿し、どのような情報に、どのような人が反応するのか、調べました。
鈴木
お祭り当日だけでなく、事前調査にも出かけていましたよね。
本間
どんな町なのか全く知らなかったので、4人の学生で様子をつかみに行き、SNSの素材となる写真も集めました。実際に曳く山車を倉庫から出し、組み立てる作業も見学させてもらえ、山車好きにはたまらない写真が撮れました(笑)。また、事前調査で、交通の便があまりよくないと感じたので、じゃあアンケート項目に交通手段も入れよう、と。実際に現地に足を運んだことで、何を調査すべきか決まっていった感じです。

授業の知識・技術を生かす

鈴木
調査ではどのような苦労がありましたか。
本間
15人が3日間、グループに分かれて動かなくてはならなかったので、役割分担やスケジュール調整などが大変でした。個々のモチベーションにも差があります。うまく連携がとれるよう、思いや目的をなるべく共有することに努めました。
鈴木
研究者でも大人数で調査に出かけるとなると、準備や打ち合わせに相当時間がかかります。ましてや、みなさんは学生で、ワンチャンスしかない状態で現地に行かなくてはならない。大変だったと思います。
高橋
アンケート調査では、何人か続けて断られると心が折れそうになりました。でも、だんだん答えてくれそうな人がわかるようになるんです。夫婦連れだと、まず奥さんに話しかけるとよい、とか、若いカップルは概して協力的だとか……。英語を使いたい学生は、外国人観光客を見つけて積極的に話しかけていました。
二瓶
人数の計測といっても、実際、駅などで立って測るのは1日1時間半ぐらい。千葉交通からバスの乗降者数データをいただき、バスのデータの流れをモデル化し、それを電車や自家用車にも当てはめ、全体の人数を推定する、という手法を取りました。事前に曽根原先生が地区の4カ所に設置してくださっていたWiFiルーターのデータも活用しました。
鈴木
1日中、すべての交通機関で人数を計測する、というのは不可能ですから、一部分のデータから全体を推測していくわけですね。また、精度を高めるために複数のデータを集め、組み合わせて分析した。統計やデータ分析の知識や技術が必要で、みなさんが普段、授業で学んできたことのよい実践の場になったと思います。
二瓶
モデルを作るのは本当に大変でした。アンケートやSNSは、人の「こころ」のデータですが、人の流れは無機質で客観的なデータなので……。
本間
面白みはないですね。鈴木先生の研究室に入り浸って、2カ月以上かかったよね?
二瓶
はい。その間、授業やテストもしっかりありました!(笑)
高橋
私はSNSで1日6件、投稿する内容を考えるのが大変でした。事前調査で100枚ぐらい写真を撮っていたのですが、それだけでは不十分。お祭りを盛り上げるために、自分で「豆知識」や山車の大人形について調べたりして、発信を続けました。ただ、分析の方針は固めやすかった。「いいね」の数や、投稿が表示された回数など、反応がわかりやすかったので。
鈴木
データを取るのには苦労するけれど、分析は比較的楽、というケース。データを取る際の自由度は高かったけれど、あとの分析が大変なケース。データの種類によって違うということも、今回、身をもって実感したわけですね。

新しく、挑戦的な取り組み

本間
アンケートの分析には、一番多くのメンバーが関わりました。「統計は得意ではない」という人も、みんなノリノリで。やはり、自分たちで取ってきたデータには愛着がわきました。
鈴木
確かに授業の課題と違って、みなさん楽しそうで、手際よくまとめていました(笑)。まだ分析の途中だと思いますが、現時点ではどのようなことがわかっていますか。
二瓶
祭りの3日間で訪れた人は約2万人。この数字がわかったことが、まず重要だと思います。
高橋
インスタグラムで反応が良かったのは、やはり「食べ物」。でも、若い人も結構「山車」に反応していたのが意外でした。
本間
アンケートからは、リピーターが多いことがわかりました。全体の約40%が「山車がすごかったから、また来た」などと答えています。また、約40%が60代以上。それから、千葉や東京、茨城など近隣から来る人が多かったのですが、中には愛知や新潟から、という人もいました。アンケートだけだとサンプル数は少ないですが、この結果を人の流れやSNSから得たデータとうまくコラボさせ、裏付けをとっていく。それが私たちのプロジェクトの最大の強みだと思います。
鈴木
その通りですね。アンケート調査だけ、客観的データだけ、というのではなく、複数のデータを組み合わせ、紐づけているのがこのプロジェクトのアピールポイント。研究分野でも、実社会でも、これからこういうやり方が増えてくると思います。その意味で、みなさんは新しく、挑戦的で、重要な研究に取り組んでいる。この分野のパイオニアになれますよ。
本間
そう聞くと、モチベーションが上がります! 佐原に限らず、どこの地域でもリピーターは獲得したいはずなので、どんな人がリピーターになるのか。リピーターになる人と、ならない人との違いはどこにあるのか。そんなことをこれから分析し、情報を発信できればいいな、と思っています。佐原の大祭は夏にもありますし、春はまた違うお祭りもありますので、今回の結果や反省点を生かし、また調査に行かせてもらえればうれしいです。
鈴木
社会のさまざまな課題に対して、授業で習ったことを実践し、実践からさらに新しいことを学んで次に生かしていくわけですね。分析結果をとても楽しみにしています。私としては、「統計」の勉強に対するみなさんのモチベーションも上がることを願っています(笑)。