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対談

第13回 130人の学生で2020を目指す梅五輪プロジェクト

2018.12.21

130人の学生で2020を目指す
梅五輪プロジェクト

曽根原 登 教授
津田塾大学総合政策学部 2年 増野 晶子 さん
津田塾大学総合政策学部 2年 栗城 ゆかり さん

梅五輪プロジェクト

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、新国立競技場の建設が着々と進んでいます。津田塾大学総合政策学部は、この競技場のすぐ近く。そこで、オリンピックで社会貢献をすることを目指し、大学での「学び」と「実践的課題解決」をつなぐ学生主体の教育研究活動「梅五輪プロジェクト」が本学で動き出しています。プロジェクトの監修者である総合政策学科の曽根原登教授が、同プロジェクトの学生代表・増野晶子さんとプロジェクト管理担当・栗城ゆかりさん(いずれも総合政策学科2年生)に話を聞きました。

現場の声を聴きながら

曽根原

まずは「梅五輪」プロジェクトを立ち上げた思いを聞かせてください。

増野

私は「大学生になったら、何かに夢中になりたい」と思って進学し、その「何か」を探してきました。オリンピック会場に世界で一番近いという地の利を生かして、何かできるのではないか、やってみたいと思い、始めました。

栗城

私も自由に動ける大学生の間に何かしたくて。一人の力では大きなことはできませんが、増野さんを始めとする多くの仲間と一緒なら、私にも何かできることがあるかも、と参加しました。

曽根原

具体的にはどんなことをしていきたいですか。

増野

渋谷区の中でも、千駄ヶ谷はあまり観光客が来ない場所で、外国人慣れしていないところがあります。そこに東京オリンピック、パラリンピックでどっと人が押し寄せてきたら、きっと大変なことになる。英語が好きな津田塾生にできることはいっぱいあると考えました。例えば、JR千駄ヶ谷駅の構内に英語版の案内マップを作ったり、近くに将棋会館があるので、日本将棋連盟と連携して初心者用の英語版将棋パンフレットを作ったり……。商店街や企業、地方の自治体、いろいろなところと連携しながら、オリパラに向けた街づくりや企画の実用化を進めたいです。

栗城

いろいろな団体がオリパラに向けて活動を始めていますので、そことの差異化も図りたい。ふだん授業で学んでいることを生かし、大学生ならでは、総合政策学部生ならでは、の活動にしたいですね。例えば、英語以外にも、データサイエンスの知識を生かした、今後の街づくりに役立つモノ。それを、オリパラを機にここにやって来る多くの人たちに紹介できたら、うれしいです。

曽根原

津田塾ならでは、総合政策学部ならでは、の活動の特徴は?

増野

今までいろいろなプロジェクトに取り組んできましたが、共通して言えることは「現場の声を聴く」という姿勢だと思います。例えば、徒歩圏内にある代々木病院にも出かけ、外国人患者さんへの対応で困っていることを事務次長さんから直接うかがいました。「痛い」という言葉一つとっても、いろいろな種類の「痛い」があり、その対応に困っているとか、病院内にも、外にも英語の案内がないので、迷ってしまう方が多いとか。将棋のパンフレットでは、日本将棋連盟の方と相談しながら、初心者の外国人でもわかるよう、チェスのルールと関連付けながら説明することにしました。

栗城

千駄ヶ谷の案内マップなども、ただ英訳するのではなく、それを見ただけで、どこで何が行われているのかすぐイメージできるよう、イラストをつけました。千駄ヶ谷という街だけでなく、日本文化についても広く知ってもらいたいな、と工夫したつもりです。

曽根原

2020オリパラの際にもう一つ重要なのは、スケールですよね。10人ぐらいの外国人なら対応できることでも、その規模が1千万人ともなれば耐えられるのか、という問題があります。

栗城

どれだけのボランティアが集まるかもわかりませんし、ね。1つ考えたのは、いま頑張って取り組んでいる「チャット・ボット」(テキストや音声を通じて会話を自動的に行う装置)を活用できないか、ということなんです。外国人一人ひとりに通訳をつけることは不可能でも、スマートフォンを使って一度にたくさんの方に対応できるものをつくれるのではないか、と。

曽根原

将棋にも応用できそうですね。スマホのコンテンツにして、例えば、駒の動かし方がパッと出てくるようにするとか。パンフレットだと、1枚で一人しか見ることができないけれど、これだと世界中の人が同時に見ることができます。

増野

確かにそうですね。考えてみます。

正解が見えない

曽根原

こうしたプロジェクトを進めていくうえで、楽しい点、大変な点は何ですか。

栗城

大学で勉強したことが、その場限りや、テストのためというのではなく、実際に自分で使えてプログラムとなって世の中で動く。こうした経験は、自信にもなりますし、楽しいですね。つらいのは、正解が見えないこと。何かやると、すぐ課題が見えてきて、改善し、さらにつくり変えて……というのを繰り返しています。すぐに「はい、完成」とはならず、ずっと模索を続けなくてはならない点が苦しくもあり、でも楽しくもあります。

曽根原

プロジェクトには約130人の学生が関わっていますよね。それだけの人をまとめていくのは、大変だと思います。

増野

130人もいると、「私、こんなことしてきました」とか「こんなことできます」とか、とにかくみんないろいろなバックグラウンドを持っているんです。福井県鯖江市の職人技を用いた訪日外国人向けのお土産を開発するプロジェクトもあるのですが、それなどは次々とアイデアが出てきました。大人数だからこそ、できることだと思います。大変なのは130人全員が楽しく活躍できる場にしていくこと。特に、1年生にもっと活躍してもらえるような環境をつくっていかなくては。栗城さんと食事をしていても、話題は活動のことばかり。どんどん課題が出てきて、止まらなくなります(笑)。

曽根原

会社など雇用関係のある組織と違って130人のボランティア集団ですよね。どうやったら人は動くのでしょう。アイデアはいろいろあったほうが良いと思いますが、バラバラな人たちをどうまとめて、動かすか。

増野

私がいつもやっていることは、熱意を持った人たち、課題を抱えた人たちと一緒に食事することです。食べながら、ああでもない、こうでもない、といろいろしゃべって、「やりたいこと」を明確にしていくんです。ゴールが明確になれば、そこを目指して頑張ろう、となり、スケジュールも見えてきますね。

曽根原

目標の共有ですね。それだけで動きますか。

増野

やはり、大人数をまとめて動かすことは大変ですね。

卒業研究とも連動

栗城

でも「ゴールが一緒」というのは重要。何を目指しているのか、何を得たいがために参加しているか。そこがバラバラだとまとまりません。また、帰属意識を高めることも必要で、一人ひとりにある程度の責任感を持ってもらえると、みんなが同じ方向を向いて動きだすのだと思います。全員にそれなりの責任感を持ってもらう、というのも、また難しいのですが……。

曽根原

総合政策学的に言うと、躍動するコミュニティや社会システムの構築のために、共通の目標設定や権限移譲をどのように実現していくか、といったことですよね。やあ~。みなさん、いい勉強してますね(笑)。最後に、2020オリパラまで600日を切りました。今後の活動では、どこに力を入れていきますか。

栗城

現在いろいろなワーキンググループが活動をしていますが、イベントにしても、商品にしても、2019年の夏にはある程度完成させ、そこから本番までにいろいろ改善していかなくてはいけません。

増野

本当に運営できるか、効果があるかなど、本番1年前のプレイベントでしっかり検証します。2019年には私も3年生になり、卒業研究にも取り組まなくてはなりません。梅五輪でやってきたことを、学術的にもきちんとまとめていきたいです。

栗城

私も卒業研究でやりたいテーマとプロジェクトが連動していますので、2つを両立させます。

曽根原

楽しみですね。頑張ってください。

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